3つの簡易計算方法を確認する その2
四分割法・偏心率について
壁量計算で壁量が足りていても、耐力壁の配置が偏っているとバランスが悪くなり、地震力や風圧力など水平力が加わったときに建物がねじれて倒壊の危険がでてきます。耐力壁のバランスの確認方法としては、四分割法や偏心率があります。四分割法は、2000年に法改正された項目の一つで、建物の各階、東西・南北方向の長さを4等分し、その側端部分にある壁量の充足率とバランスをチェックしていくものです。判定目標としては、側端部分の存在壁量が地震力・風圧力の必要壁量以上であることを前提に壁量充足率または壁率比のどちらかの条件をクリアすれば良いとされています。
なお四分割法は簡易計算ですが、偏心率は専門的な詳細計算が必要になりますので、こちらでは四分割法について確認して偏心率は後でさらっと触れます。
壁量計算と同様にSTEP1~STEP4の流れで確認していきます。
四分割法の判定目標
■ 四分割法の側端部分の例
【側端部分とは】
建物の平面を1/4ごとに区切り、X方向Y方向(東西・南北)それぞれの両端の1/4部分を側端部分という。
四分割法の判定手順
STEP1 側端部分の必要壁量を求める 部分
STEP1~2は側端部分について壁量計算と同様の検証を行います。
側端部分の必要壁量 = 側端部分の床面積 × 床面積に乗ずる数値(表1)
STEP2 側端部分の存在壁量を求める 部分
側端部分の存在壁量 =( 耐力壁の壁倍率 × 耐力壁の長さ )の合計
STEP3 壁量充足率が1を超えることを確認する
壁量充足率 = 側端部分の存在壁量 / 側端部分の必要壁量
STEP4 壁量充足率が1以下の場合、壁率比を求め0.5以上であることを確認する
壁率比 = 側端部分で壁量充足率の小さい側 / 側端部分で壁量充足率の大きい側
壁率比は、X方向Y方向(東西・南北)ごとにそれぞれの側端について、壁量充足率の小さい方が大きい数値の0.5(1/2)倍以上であるかを確認します。
■ 四分割法2階建て検証の例(※A>B、C>D、E>F、G>H)
こちらで具体的な四分割法のケーススタディが確認できます。参考にしてください。
四分割法の疑問
ところで、四分割法ではなぜ建物を4つに分割して検討するのか、また中央にある耐力壁を考慮しない理由はなぜか、確認しましょう。
前述の通り耐力壁は壁配置のバランスも大事ですが、やはり外周に配置することが大切です。例えば電車の急停車の時、足を広げているのと足を揃えているのとでは、前者の方が踏ん張れますよね。同じイメージで、水平力に抵抗できるよう外周の配置が十分かを確認するためなのです。また不整形な形状の建物の場合、下記のような例では整形な平面形状と同じように四分割法で計算して構いませんが、あまりに不整形な場合は偏心率の計算で確認することもあります。
右図のように立面が不整形な場合もあります。どのような計画になるかで、係数などに違いが出てきます。
偏心率について
偏心率とは耐力壁の配置バランスを確認する詳細検討方法で、「重心」と「剛心」の位置が近く偏心率が小さいこと(0.3以下)を確認します。
重心と剛心が離れると、重心を押す地震力と剛心を押す耐力壁により抵抗力で建物はねじれを起こしてしまい、倒壊につながります。
「重心」:建物の中心、床の形状に影響。地震力は重心を押すように作用する。
「剛心」:建物の耐力壁の配置による強さの中心。抵抗力は剛心を押すように作用し、耐力壁が多い方に寄る。
3つの簡易計算方法を確認する その3
柱の柱頭・柱脚の接合方法(N値計算等)
N値計算は本題の「壁量および配置」ではなく第六回『施工 虎の巻!』で確認した「柱頭・柱脚金物」の内容なのですが、簡易計算の一つなので概要だけ確認していきます。
耐力壁の壁量、配置が十分でも、軸組がしっかり接合されていないと地震力や風圧力を受けた際に金物が抜け倒壊につながります。耐力壁が性能を発揮するためには接合部が重要になります。N値計算は、柱に生じる引張り力を、その柱の左右の耐力壁の壁倍率差をもとに計算します。N値を求めたら、告示のN値に見合う金物を告示から選択していきます。
まとめ
さて、今回は現場担当者にも知ってほしい『設計 虎の巻!』として、「耐力壁の壁量および配置」について確認してきました。地震や台風の被害も増加する近年、構造安全性については一層関心が高まっていると思います。概要のみ確認しましたが、是非ケーススタディも確認していただき、かし保険検査の確認項目の理解を深めていただければと思います。
では今回のまとめです。
次回は「施工 虎の巻!」に戻って横架材について確認します。
どうぞお楽しみに!
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