GMEN PRESS

第十一回 かし保険躯体検査前後の工事の注意点・Ⅶ(水平構面:小屋組)

小屋組の施工について

垂木について

垂木は屋根の傾斜に沿って上から下へ流れている構造材で屋根面の荷重を支える役割があります。垂木はメーターモジュールなら500㎜、尺モジュールでは455㎜間隔で設置します。垂木は屋根面の素材と軒の出により、幅を使い分けます。屋根材の固定は野地板だけではなく、垂木を含めて釘を打つことで屋根の強度向上や雨漏れの防止をすることができます。

■ 屋根材の固定

■ 垂木からずれて固定をしてしまった例

小屋組のチェックポイント【1】
垂木は屋根素材に合わせ、指定の間隔で取り付ける
屋根材は野地板を含め垂木に固定する

軒先部の垂木の接合方法

軒先は台風等の暴風時の吹き上げで外れないよう専用金物を使用して、全ての垂木を桁にしっかりと留め付けましょう。

垂木と軒先部の接合方法

垂木部の接合金物は以下のようなものがあります。
金物製造メーカーの施工基準に準じた指定の方法で正しく金物(品番・ビス本数・設置向き等)が施工されているかを確認しましょう。

■ ひねり金物

■ 垂木固定金物

■ くら金物

■ 垂木留め専用ビス

垂木留め専用ビスは従来数本の釘留めが必要であったところが、上から1本打つだけで済むので現場の省力化にもつながります。垂木留め専用ビスは従来の金物と違い、野地板を被せてしまうと見えなくなってしまうので、取付の際は写真を撮る等、後から確認できるようにしておきましょう。

垂木部接合金物 不適切な施工例

垂木接合金物のチェックポイント
指定の接合金物を正しく使い、取付向き・位置・長さに注意する

小屋組の振れ止め

小屋組では、水平方向の揺れ(小屋束の揺れ)に抵抗し、屋根の倒壊を防ぐために小屋筋かいなどの振れ止めを取り付けます。

【振れ止めの種類】
① 小屋筋かい(張り間筋かい)

 小屋束をつなぎ、張り間方向に取り付ける筋かい
 雲筋かい(けた行筋かい)

 小屋組がけた行方向に倒れるのを防ぐため、
 小屋束をつなぐけた行方向の筋かい
③ 振れ止め(束継ぎ)

 梁から小屋束の下端が単独で動かないように固定する部材
 けた行き方向で小屋束の足元に取り付ける

■ 小屋組の水平方向の力の流れ方

小屋組の振れ止め

■ 小屋筋かい・雲筋かい・振れ止めの固定方法

振れ止めの材料や寸法に規定はありませんが、幅105㎜×厚さ15㎜程度の貫板を使用するのが一般的です。
固定方法は交差する小屋束1箇所あたりに釘を2本打って固定します。釘はN50を使い、長さは貫板厚さの2.5倍以上です。
筋かいや振れ止めは小屋束の揺れや横倒しを防ぎ、小屋組との一体化を目指すため固定は小屋束の位置で行うことが必要です。小屋梁や母屋等の横架材に固定しないように注意してください。

< 小屋束の固定方法 >

振れ止め等の不適切な施工例

< 小屋筋かいの固定方法の間違い >

< 振れ止めの未設置 >

建築基準法施行令第46条第3項では原則として「小屋組には振れ止めを設けなければならない。」と定めています。振れ止めは雲筋かい箇所の小屋束に添えつけて釘打ちする部材で、雲筋かいと小屋束の三つの部材で三角形を構成して、小屋組のけた行方向への変形を防止します。

小屋組のチェックポイント【2】
横揺れや変形に対応できるよう
小屋筋かい・雲筋かいや振れ止めを確実に設置する

野地板について

野地板は、屋根材と防水紙、垂木を繋ぐ重要な下地材です。
野地板はかし保険の検査の対象外であり、屋根材や防水紙の下に隠れてしまうので、普段は特に注意を払わないで施工している方も多いと思いますが、防水紙同様に屋根から雨漏れが発生した場合ダメージを受ける可能性が高い部材です。野地板に染み込んだ雨水は垂木や天井といった周辺に伝わっていき、カビを発生させ家全体の木材を腐食させてしまいます。雨漏れ対策としては防水紙の施工だけではなく、下地の野地板の施工の良しあしも重要なポイントとなるのです。

■ 野地板の種類

一般的な住宅で使用されている野地板には、主に3つの種類があります。それぞれの種類ごとに特徴を見ていきましょう。

■ 野地板と存在床倍率

野地板は垂木に軒先の張り始めの位置を出した後、軒先から棟に向かって張り上げます。
継ぎ手は垂木上とし、合板の継ぎ目が一直線に並ばないよう、いわゆる「千鳥張り」にします。なお、屋根面は床組と同様に水平構面になるので、品確法性能表示制度独自のチェック項目として存在床倍率という指標があり、釘や野地板の仕様によって倍率が決められています。建物の安全性を確保するために、垂木や釘間隔に注意して施工しましょう。

屋根勾配・野地板の仕様と床倍率(抜粋)

参考:国土交通省告示1347号抜粋 この表において、「構造用合板」は合板の日本農林規格(平成15年農林水産省告示第233号)に規定する構造用合板の特類又は1類を、「構造用パネル」は構造用パネルの日本農林規格(昭和62年農林水産省告示第360号)に規定する1級、2級又は3級を、「鉄丸釘N50」はJISA5508-2005に定めるN50又はこれと同等の品質を有する釘をいう

■ 野地板の施工

野地板が設計指定通りの材料か、張り方は「千鳥」になっているか、打ちこまれた釘が垂木から外れていないか確認します。また構造体を雨に濡らさないよう、施工のタイミングは上棟時、あるいはその後数日中には防水紙張りまで完了するよう手配を行い、屋根の防水下地対応も併せて行うことが望ましいです。

小屋組のチェックポイント【3】
野地板は屋根材・防水紙・垂木を繋ぐ重要な部材
指定通りの部材・釘を使い正しい配置で施工されているか

2022年9月1日
Return Top