説明を行った後に計画変更が生じた場合の対応
この制度は建築士から建築主に対して、設計する建物の省エネ性能等について説明を行うことを通じて建築主の行動変容を促すことをねらいとした制度です。そのため説明を行った後、設計変更が生じるたびに改めて評価・説明を行う必要はありません。
ただし、当初の説明において省エネ基準に適合していると説明していたものが、設計変更により省エネ基準に適合しなくなる場合も含め、基本的には再度説明を行う方が良いと思います。
法令違反となる恐れのある説明方法
- 評価・説明を行わない。
- 一般的には希望しない方が多いと説明するなど、恣意的に評価や説明を実施しない方向に誘導する。
- 建築士の責任において評価を行わない(建築士以外の主体が評価を行っている)。
- 設計・施工・契約等に関する多様な他の書面とあわせて説明書面を交付するのみで、特筆して説明を行わない。
- 省エネ基準に不適合の場合に、省エネ性能を高めるための措置について、具体的な説明がない。
- 建築士が省エネの必要性や効果に関する情報提供を行わず、省エネ性能を向上させることでコストが増加するとだけ説明する。
もし建築士から省エネの必要性や効果の情報提供が行われていれば適合させることを検討していたなど、後にトラブルにつながることも想定されますので、十分にご注意ください。
よくある質問
1.説明内容は確認申請と関連しますか?
- 説明に用いる書面は確認申請時の審査対象ではありませんので直接関連しません。
2.説明する建築士は誰でも良いのでしょうか?
- 説明する建築士は、説明を行う建築物の設計に携わっている建築士である必要があります。設計を行った建築士であれば、必ずしも監理を行う建築士でなくても構いません。
- 説明を行う建築物の設計に携わっている建築士であれば、重要事項説明の書面や確認申請書の設計者欄に記載された建築士以外の方であっても構いません。
3.省エネ性能の評価は建築士であれば誰が行ってもよいのですか。
- 説明義務制度に基づく評価は、当該建築物の設計に従事することとなる建築士が行う必要があります。
その他Q&Aも多数ご用意されていますので併せてご確認ください。
最後に
3月4日の日本経済新聞で、国土交通省は2025年度にも新築住宅について省エネ基準の適合を義務図ける方針であることを報道しております。
ようやく4月から説明義務が始まるという矢先での報道は、2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)に向けた布石なのでしょう。
これからは省エネ基準に適合できる住宅を設計・建築できない建築士は業界から退場しなければならないくらいの時代に突入します。
私が言わなくても既にわかっている建築士が圧倒的多数であると思いますが、まだまだピンと来ていない建築士も一定程度いるような気もしており、混乱するのは想像が付きます。
当社は住宅瑕疵担保責任保険法人であると同時に住宅性能評価機関や適合証明検査機関でもありますので省エネ基準に関してはプロの建築士が在籍しています。しかしながら皆様一人一人にレクチャーできるほど力のあるボランティア団体ではありませんので、建築士の皆さんは本記事にてご紹介したオンライン講座等でしっかりと勉強して対応してください。
〔 筆者:ハウスジーメン 取締役 道下佳紀 〕