説明義務制度の4ステップ
説明義務制度は、次の4つのステップで進めるとありますが、STEP1とSTEP2は同時に行うというのも良いと思います。
STEP1 情報提供(省エネの必要性・効果の情報提供)
STEP2 評価・説明の実施に関する建築主の意思確認
STEP3 設計を行う住宅・建築物の省エネ性能の評価
STEP4 設計を行う住宅・建築物の建築主への評価結果の説明
STEP1 情報提供(省エネの必要性・効果の情報提供)
建築士から建築主に対して省エネの必要性や効果について情報提供を行うことを通じて、省エネに対する意識の向上につなげることが重要としています。
情報提供の具体的な内容についてもテキストに記載されていますが、独自のツールを用意していない建築士は、国土交通省等が作成したチラシやリーフレットを活用すると便利です。
国土交通省のホームページからダウンロードできます。
なお、省エネの必要性等の情報提供に合わせて、省エネ性能の計算等に費用が必要となることや、計算方法によって計算の精度や必要となる費用が異なること、省エネ性能向上のための工事等に係る費用や工期が必要となること等についても建築主の理解を得ておくと良いとされています。
この辺は賛否分かれるところです。私は育ちが北海道なので省エネ性能に関しては昔からアピールする文化がありましたので、「説明義務制度に乗じて計算まで費用が掛かります。」と言うよりは設計費用にインクルードした方が良いと思います。
情報提供を行う時期
いつまでに情報提供を行わなければならないという決まりはありませんが、そもそも営業段階での説明は一定程度必要となり、建築主が希望する省エネ性能等は設計内容に大きく関係するため、提案の過程で営業担当と設計担当(建築士)がコラボしてSTEP2の意思確認を一体的に行う方が合理的だと考えます。
STEP2 評価・説明の実施に関する建築主の意思確認
建築士は、あらかじめ建築主に省エネ基準の評価・説明の要否について意思確認をすることになります。
この意思確認の際に、省エネ計算で採用する計算方法、評価の時期や回数のほか、設計変更があった場合の評価・説明の扱いについても説明を行い、合意を得ておくことが重要とされています。
建築主の意思に応じて、後述の書面の作成や保存が必要となります。
意思確認を行う時期
こちらもいつまでに行わなければならないという決まりはありませんが、評価や説明を行うタイミングなど設計のプロセスや評価等に要する費用、設計契約前の事前相談の段階が一般的で、建築士法に基づく重要事項説明を行う際にSTEP1の情報提供と併せて、できるだけ早い段階で行うことをお勧めします。
評価・説明は不要であることを表明する書面の作成・保存
建築主が評価・説明は不要であるとの意思を表明する場合には、建築士法に基づく保存図書としてその旨を記載した書面を建築士事務所に15年間保存する必要があります。
※ 意思確認のための書面(リーフレット)も用意されるようです。
なお、評価・説明を希望する場合には、意思表明書面の作成の必要はなく、STEP4において、説明に用いた書面の写しを建築士事務所に保存することとなります。
STEP3 省エネ性能の評価
建築士は設計する建物について、省エネ性能を計算し、省エネ基準に適合しているかどうかについて評価(=省エネ性能を計算した結果が省エネ基準に適合しているか否かの確認)を行います。
建物の具体的な省エネ性能の計算方法については、国土交通省のホームページから計算方法の講習会テキストを参考にしてください。
なお、増改築を行う場合の評価や併用住宅、複合建築物は、建物全体について省エネ基準への適否を評価することになりますので注意してください。
既存部分の断熱性能が不明など建物全体の省エネ性能を計算することが困難である場合には、増改築後に建物全体で省エネ基準に適合することが困難であるとして省エネ基準に不適合であると評価することも考えられます。
省エネ性能の評価を行う時期
省エネ性能の評価については、実施設計がある程度進み、省エネ性能に影響する設計が概ねまとまった段階で行います。省エネ性能の計算については、建築士自らが実施しなくても構いませんが、評価については、計算結果を踏まえて建築士の責任において行う必要があります。
STEP4 評価結果を建築主へ説明
建築士は、STEP3で行った評価に基づき、書面を交付して「省エネ基準への適否」の説明を行います。説明書面は参考様式が作られています。
省エネ基準に適合していない場合は、省エネ性能確保のための措置についても説明を行う必要があります。
資料には『建築主は省エネ基準へ適合させる努力義務があることから、その旨を説明するとともに、省エネ基準へ適合させるために必要な措置を説明し、省エネ基準に適合させることを促すことが考えられます。』と書いてありますが、適合した設計を提案するのが一般的なので、適合していない説明をすること自体「当社の設計(建物性能)は悪いですよ。」と言っているようなものなので、ここは省エネ基準をクリアするスペックを標準仕様にしておく必要があるという裏返しだと思います。
説明の時期
説明を行う時期については、評価結果の説明を踏まえて建築主が設計内容の変更を希望する場合も考えられるので工事の着工までに余裕を持って行う必要があります。
説明書面の保存
説明書面は、建築士法に基づく保存図書として、建築士事務所に15年間保存する必要があります。このため、建築主に対して書面を交付して説明を行った上で、説明書面の写しを保存することになります。
なお、評価の根拠となる省エネ性能の計算書等については保存図書の対象とはなっていませんが、併せて保管することをお勧めします。
都道府県等による建築士事務所への立ち入り検査の際に、意思表明書面や説明書面が保存されているかについても検査の対象となり、保存されていない場合には、建築士法に基づく処分の対象となる可能性があります。