トップランナー制度の手続き
さて、話を戻して住宅トップランナー制度において大手はどのような手続きを行うかを理解しておきましょう。
極端な例ですが、注文戸建てを500戸、賃貸アパートを1,000戸、分譲戸建てを200戸供給していた場合、全てが報告対象となります。(2世帯住宅で共同住宅・長屋に該当する場合は賃貸アパートとなりますのでご注意ください。)
基本的には自主的に報告することになりますが、あらかじめ国土交通省が報告対象事業者と想定している事業者には個別に報告の依頼が来るようです。
提出物は、「①報告様式」と「②住宅または住宅タイプごとのエネルギー消費性能算定結果」となるようです。
①報告様式
国土交通省のホームページに今後掲載されますが、記入事項としては報告日、新築した住宅戸数、社名、代表者名(社印等は不要)、連絡担当者情報などを記載するようです。
②計算プログラム
建築研究所HPに掲載される「エネルギー消費性能計算プログラム(バージョンは、Ver.2.3.1以降のもの)」を使用し、プログラムより出力されたPDFデータは、編集せずに提出、PDFデータのファイル名は、全て異なる名称にして邸別に1年度分を提出するようです。
報告する計算結果は、説明義務制度や届出義務制度において行った計算結果となりますが、報告時点以降に計画変更があった場合であっても、大きな変更でなければ、計画変更後の仕様に基づいて計算をやり直す必要はないようです。ただし、報告結果を調査した際に、実際に建設された住宅が大きく異なるケースがあった場合には、再度提出を求めるなど是正等が求められる可能性もあります。
省エネ基準に基づく評価基準の概要(戸建)
ちなみに省エネ基準はご存知ですよね、中小工務店や建築士の習熟状況に関するアンケート結果は下記のとおりで、半分は計算できないという残念な結果です。
建築士事務所で出来ないって・・・。
でもご安心ください。簡単に省エネ基準の適否を計算出来る方法を追加してくれております。
詳細な計算方法には触れませんが、標準計算方法(以前は詳細計算と呼んでいた)から簡易計算(木造戸建てのみ)、モデル住宅法、仕様基準(計算なし)と計算結果は大まかになっていくのですが、作業量は少なくなるという仕組みです。当然、仕様としては安全側(例えば断熱材が厚くなるなど)となっていく仕組みです。【下図を参照】
先日講習会で新たに追加された「モデル住宅法」の概要を聞きましたが、外皮だけではなく一次エネルギーも簡易計算でできるようです。それが良いか悪いかは別として、きちんと省エネ性能を確認、アピールするなら標準計算で。まずは基準がクリアできれば良いのであれば簡易計算かモデル住宅法でと、評価方法も選択できるようになっております。
■ 省エネ基準法に基づく評価方法の概要(戸建住宅)
最後に
住宅トップランナー制度は事業者の供給する住宅の省エネ性能向上を促す措置として、分譲戸建住宅のみから注文戸建住宅・賃貸アパートへと対象を拡大しました。一年後には300㎡未満の小規模住宅・建築物(共同住宅や小規模店舗等も含む)の設計に際して、建築士から建築主に対して、省エネ基準への適否を書面で説明を行うことも義務化されます。まだ1年の猶予期間がありますので、他人事とは考えずに準備を進めてください。
参考とした国土交通省の特設ページです。皆様も一度ご覧ください。
〔 筆者:ハウスジーメン 取締役 道下佳紀 〕